介護保険サービスを運営する事業所にとって、介護職員等処遇改善加算(以下「処遇改善加算」)は、職員の賃金を引き上げ、人材の確保・定着を図るうえで欠かせない加算です。
令和8年度は、6月に報酬改定を待たない期中改定が行われ、加算区分が6つに再編されたほか、訪問看護・訪問リハビリテーション・居宅介護支援などにも新たに加算が設けられました。4月・5月分と6月以降分で加算率や区分が異なるため、制度の全体像を正確に押さえておく必要があります。
本記事では、厚生労働省の通知とQ&Aに基づき、令和8年度の介護職員等処遇改善加算の仕組みを、加算区分・加算率、算定要件、計算方法、手続きの流れ、返還となるケースの順に解説します。
この記事の要点
- 処遇改善加算は、介護報酬に上乗せして算定する加算で、事業者は加算額に相当する賃金改善を行う必要があります。
- 令和8年6月以降の加算区分は、加算Ⅰイ・Ⅰロ・Ⅱイ・Ⅱロ・Ⅲ・Ⅳの6区分です(4月・5月は加算Ⅰ〜Ⅳ)。「ロ」は、令和8年度特例要件を満たす事業所の上乗せ区分です。
- 訪問看護・訪問リハビリテーション・居宅介護支援・介護予防支援は、6月から新たに対象となりました(加算率1.5%〜2.1%)。
- 1か月の加算額は「1か月の総単位数 × 加算率 × 1単位の単価」で計算します。
- 処遇改善計画書の提出、賃金改善の実施、実績報告書の提出という一連の手続きが必要です。令和8年度分の実績報告書の提出期限は、通常の場合、令和9年7月31日です。
1. 介護職員等処遇改善加算とは
処遇改善加算とは、介護サービス事業所・介護保険施設で働く職員の賃金改善を目的として、介護報酬に上乗せして算定する加算です。
介護報酬の額は、介護保険法に基づき厚生労働大臣が定める基準により算定されます(介護保険法41条4項など)。処遇改善加算もこの基準の中に定められた加算の一つで、算定の基本的な考え方や事務処理の手順は、厚生労働省老健局長の通知で示されています。
処遇改善加算を算定する事業者は、加算の算定額に相当する賃金改善を実施しなければなりません。賃金改善には、基本給・手当・賞与等(退職手当を除く)の改善のほか、賃金改善に伴って増える法定福利費等の事業主負担分を含めることができます。
制度の沿革
処遇改善加算は、平成23年度まで実施された介護職員処遇改善交付金の効果を継続させるため、平成24年度の介護報酬改定で創設されました。その後、次のように見直されています。
【表1】処遇改善加算の主な沿革
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 平成24年度 | 介護職員処遇改善加算を創設 |
| 令和元年10月 | 介護職員等特定処遇改善加算を創設 |
| 令和4年10月 | 介護職員等ベースアップ等支援加算を創設 |
| 令和6年6月 | 3つの加算を一本化し、介護職員等処遇改善加算を創設 |
| 令和8年6月 | 期中改定により、対象を介護従事者に拡大し、上乗せ区分(Ⅰロ・Ⅱロ)を創設。訪問看護・訪問リハビリテーション・居宅介護支援等に加算を新設 |
2. 令和8年度の主な変更点
令和8年度は、「強い経済」を実現する総合経済対策(令和7年11月21日閣議決定)を踏まえ、令和9年度の介護報酬改定を待たずに期中改定が実施されました。通知では、次の措置を講じるとされています。
- 介護職員のみならず介護従事者を対象に、月1.0万円(3.3%)の賃上げを実現する措置
- 生産性向上や協働化に取り組む事業者の介護職員を対象に、月0.7万円(2.4%)の上乗せ措置
- 定期昇給0.2万円を含め、介護職員について最大月1.9万円(6.3%)の賃上げが実現する措置
具体的には、次の3点が柱です。
- 処遇改善加算の対象を、介護職員のみから介護従事者に拡大(加算率の引上げ)
- 生産性向上や協働化に取り組む事業者に対する上乗せの加算区分(Ⅰロ・Ⅱロ)を創設
- これまで対象外だった訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅介護支援等に加算を新設
3. 加算区分と加算率
処遇改善加算の単位数は、サービス別の基本サービス費に各種加算減算(処遇改善加算を除く)を加えた1か月の総単位数に、加算区分とサービス類型ごとの加算率を掛けて算定します。
【表2】主なサービスの加算率(令和8年6月以降)
| サービス | Ⅰイ | Ⅰロ | Ⅱイ | Ⅱロ | Ⅲ | Ⅳ |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 訪問介護 | 27.0% | 28.7% | 24.9% | 26.6% | 20.7% | 17.0% |
| 通所介護 | 11.1% | 12.0% | 10.9% | 11.8% | 9.9% | 8.3% |
| 地域密着型通所介護 | 11.7% | 12.7% | 11.5% | 12.5% | 10.5% | 8.9% |
| (介護予防)小規模多機能型居宅介護 | 17.1% | 18.6% | 16.8% | 18.3% | 15.6% | 12.8% |
| (介護予防)認知症対応型共同生活介護 | 21.0% | 22.8% | 20.2% | 22.0% | 17.9% | 14.9% |
| 介護老人福祉施設 | 16.3% | 17.6% | 15.9% | 17.2% | 13.6% | 11.3% |
| 介護老人保健施設 | 9.0% | 9.7% | 8.6% | 9.3% | 6.9% | 5.9% |
※通知の別紙1表1-2〜表1-4から主なサービスを抜粋。その他のサービスの加算率は通知をご確認ください。
※介護予防・日常生活支援総合事業の第一号訪問事業は「訪問介護」と同じ加算率です。
【表3】令和8年6月に加算が新設されたサービス
| サービス | 加算率 |
|---|---|
| (介護予防)訪問看護 | 1.8% |
| (介護予防)訪問リハビリテーション | 1.5% |
| 居宅介護支援、介護予防支援 | 2.1% |
※通知の別紙1表1-5。第一号介護予防支援事業は「居宅介護支援、介護予防支援」と同じです。これらのサービスは、6区分ではなく単一の区分です。
なお、令和8年6月以降も、(介護予防)福祉用具貸与、特定(介護予防)福祉用具販売、(介護予防)居宅療養管理指導は、処遇改善加算の算定対象外です。
4月・5月分は、従来の4区分の加算率が適用されます。たとえば訪問介護は、加算Ⅰ 24.5%、Ⅱ 22.4%、Ⅲ 18.2%、Ⅳ 14.5%です。
処遇改善加算は、区分支給限度基準額の算定対象から除外されます。
4. 算定要件
処遇改善加算を算定するには、加算額に相当する賃金改善の実施に加えて、加算区分に応じた要件を満たす必要があります。
【表4】加算区分ごとの算定要件(令和8年6月以降)
| 加算区分 | 月額賃金改善 | CP要件Ⅰ 任用・賃金 |
CP要件Ⅱ 研修 |
CP要件Ⅲ 昇給 |
CP要件Ⅳ 440万円 |
CP要件Ⅴ 配置 |
職場環境等要件 | 特例要件 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 加算Ⅰイ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○(Ⅰ・Ⅱの水準) | – |
| 加算Ⅰロ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○(Ⅰ・Ⅱの水準) | ○ |
| 加算Ⅱイ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | – | ○(Ⅰ・Ⅱの水準) | – |
| 加算Ⅱロ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | – | ○(Ⅰ・Ⅱの水準) | ○ |
| 加算Ⅲ | ○ | ○ | ○ | ○ | – | – | ○(Ⅲ・Ⅳの水準) | – |
| 加算Ⅳ | ○ | ○ | ○ | – | – | – | ○(Ⅲ・Ⅳの水準) | – |
※CP=キャリアパス。通知の別紙1表2-2(表1-2〜1-4のサービス)をもとに作成。4月・5月分の加算Ⅰ〜Ⅳは、特例要件を除き、加算Ⅰイ・Ⅱイ・Ⅲ・Ⅳと同じ組み合わせです(表2-1)。
月額賃金改善要件
加算Ⅳの加算額の2分の1以上を、基本給または決まって毎月支払われる手当(以下「基本給等」)の改善に充てる要件です。加算Ⅳ以外の区分を算定する場合も、仮に加算Ⅳを算定した場合に見込まれる加算額の2分の1以上が基準になります。
すでに加算を算定している事業所では、この要件を満たすために賃金総額を新たに増やす必要はなく、手当や一時金による賃金改善の一部を基本給等に付け替える方法も認められています。ただし、新たに基本給等を引き上げる場合は、ベースアップ(賃金表の改訂による一律の引上げ)によることが基本とされています。
Q&Aでは、付け替えの結果、事業所全体の賃金水準だけでなく、各職員の賃金水準も低下しないよう努めることとされています(Q&A問3)。
キャリアパス要件Ⅰ〜Ⅲ
- キャリアパス要件Ⅰ(任用要件・賃金体系の整備等):介護職員の職位・職責・職務内容等に応じた任用要件と賃金体系を定め、就業規則等の明確な根拠規程を書面で整備し、全ての介護職員に周知すること。
- キャリアパス要件Ⅱ(研修の実施等):介護職員と意見を交換しながら資質向上の目標と具体的な計画を策定し、研修の実施または研修機会の確保をして、全ての介護職員に周知すること。
- キャリアパス要件Ⅲ(昇給の仕組みの整備等):経験、資格等、または一定の基準に基づく定期の判定により昇給する仕組みを設け、就業規則等で書面化し、全ての介護職員に周知すること。
常時雇用する者が10人未満で就業規則の作成義務がない事業所では、就業規則の代わりに内規等の整備・周知でもよいとされています。
キャリアパス要件Ⅳ(改善後の年額賃金要件)
経験・技能のある介護職員のうち1人以上について、賃金改善後の見込額が年額440万円以上であることが必要です。経験・技能のある介護職員は、介護福祉士で所属法人等における勤続10年以上の介護職員を基本としつつ、他法人での経験や業務・技能等を踏まえ、事業者の裁量で設定できます。
小規模事業所で職種間の賃金バランスに配慮が必要な場合など、例外的に困難な場合で合理的な説明があるときは、この限りではないとされています。
キャリアパス要件Ⅴ(介護福祉士等の配置要件)
サービス類型ごとに定められた、サービス提供体制強化加算・特定事業所加算・入居継続支援加算・日常生活継続支援加算の所定の区分を届け出ていることが必要です。たとえば訪問介護では特定事業所加算Ⅰ又はⅡ、通所介護ではサービス提供体制強化加算Ⅰ又はⅡです(通知の別紙1表3)。
職場環境等要件
職場環境等要件は、6つの区分、合計28項目の取組で構成されています。加算区分によって、実施すべき取組の数が異なります。
【表5】職場環境等要件の取組数
| 区分 | 加算Ⅰ・Ⅱ(イ・ロを含む) | 加算Ⅲ・Ⅳ |
|---|---|---|
| 入職促進に向けた取組 | 2以上 | 1以上 |
| 資質の向上やキャリアアップに向けた支援 | 2以上 | 1以上 |
| 両立支援・多様な働き方の推進 | 2以上 | 1以上 |
| 腰痛を含む心身の健康管理 | 2以上 | 1以上 |
| 生産性向上(業務改善及び働く環境改善)のための取組 | 3以上(⑰又は⑱は必須) | 2以上 |
| やりがい・働きがいの醸成 | 2以上 | 1以上 |
生産性向上推進体制加算を算定している場合は、生産性向上のための取組の要件を満たすものとされます。また、1法人で1つの施設・事業所のみを運営するような小規模事業者は、㉔(協働化を通じた職場環境の改善)の取組を実施していれば、生産性向上のための取組の要件を満たすものとされます。
加算Ⅰ・Ⅱ(イ・ロを含む)では、さらに、取組内容を外部から見える形で公表する見える化要件があります。介護サービス情報公表制度を活用し、実施した取組項目と具体的な取組内容を「事業所の特色」欄に記載します。同制度の報告対象外の場合は、自社のホームページなどで公表します。
令和8年度特例要件(加算Ⅰロ・Ⅱロ)
加算Ⅰロ・Ⅱロは、それぞれ加算Ⅰイ・Ⅱイの要件に加えて、令和8年度特例要件を満たす場合に算定できる上乗せ区分です。特例要件は、生産性向上や協働化に係る次のいずれかの取組で、サービス類型によって選べる取組が異なります。
【表6】令和8年度特例要件とサービス類型
| 取組 | 対象となるサービス類型 |
|---|---|
| (ア)ケアプランデータ連携システムを利用していること | 訪問介護、夜間対応型訪問介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、訪問入浴介護、通所介護、地域密着型通所介護、通所リハビリテーション、認知症対応型通所介護(表1-2) 小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護、短期入所生活介護、短期入所療養介護(表1-3) |
| (イ)生産性向上推進体制加算Ⅰ又はⅡを算定していること | 表1-3のサービスと、特定施設入居者生活介護、認知症対応型共同生活介護、介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護医療院など(表1-4) |
| (ウ)所属する法人が社会福祉連携推進法人に所属していること | サービス類型を問わない |
(ア)は、申請時点で利用していなくても、加入・利用を誓約すれば申請時点から要件を満たすものとして取り扱われます。この場合、令和9年3月末までに利用し、実績報告書で利用実績を報告します。Q&Aでは、加入だけでなく実際の利用が必要とされています(Q&A問8-2)。(イ)も、算定を誓約することで申請時点から算定しているものとして取り扱われます。
新たに対象となったサービス(訪問看護・居宅介護支援等)の要件
表3のサービスは、賃金改善の実施に加え、次のいずれかを満たすことで算定できます。
- 令和8年度特例要件:ケアプランデータ連携システムの利用(誓約でも可)、または社会福祉連携推進法人への所属
- 加算Ⅳの取得に準ずる要件:キャリアパス要件Ⅰ・Ⅱと、職場環境等要件(各区分1以上、生産性向上2以上)を満たすこと。令和8年度は、令和9年3月末までの整備の誓約でも可
5. 賃金改善のルール
処遇改善加算で最も重要なのは、加算額に相当する賃金改善を確実に実施することです。通知とQ&Aでは、主に次のルールが示されています。
賃金水準を下げない
賃金改善は、基本給・手当・賞与等のうち対象とする項目を特定して行います。特別事情届出書を届け出る場合を除き、特定した項目を含めて賃金水準を低下させてはなりません。安定的な処遇改善のため、基本給による賃金改善が望ましいとされています。
令和8年度に増えた加算額は、新たな賃金改善に充てる
令和7年度と比べて令和8年度に増えた加算額(新規算定・上位区分への移行や、6月以降の加算率の引上げによる増加分)については、過去の賃金改善の実績にかかわらず、新たに賃金改善を実施しなければなりません。この新たな賃金改善は、ベースアップによることが基本とされています。ベースアップのみで行えない場合は、手当や一時金を組み合わせることもできます。
配分は柔軟だが、著しく偏った配分は不可
職種間の配分は、経験・技能のある介護職員の処遇改善が重要であることに留意しつつ、事業所内で柔軟に配分できます。対象には介護職員以外の全職種が含まれ、Q&Aでは看護職員、生活相談員、介護支援専門員、調理員、事務職などが例示されています(Q&A問2-1-2)。
ただし、一部の職員や、同一法人内の一部の事業所のみに賃金改善を集中させるなど、職務の内容や勤務の実態に見合わない著しく偏った配分は認められません。
対象にできない職員
加算を算定していない介護サービス事業所等(加算の対象外サービスを含む)や、介護保険以外のサービスの事業所等の職員は、加算を原資とする賃金改善の対象に含めることができません(Q&A問2-8)。法人本部の職員は、加算の算定対象となる事業所の業務を行っていると判断できる場合には、対象に含めることができます。
役員・代表者の取扱い
代表者以外の役員が、その事業所の職員として実際に介護サービスを提供しているなど、加算の算定対象となる事業所の業務を行っていると判断できる場合は、賃金改善の対象に含めることができるとされています(Q&A問2-9)。この場合は、役員報酬と職員としての給与を区分し、勤務実態や職務内容を記録しておくことが重要です。
一方、処遇改善加算は、事業者が受け取った加算を、そこで働く職員の賃金改善に充てさせる制度です。法人の代表者は加算を受け取って配分する側であり、労働者にも当たらないため、職員がいる事業所で代表者を賃金改善の対象に含めることは、制度の目的に反すると考えるべきです。
Q&A(問2-9)が代表取締役等を対象に含めてよいとしているのは、職員が1人で、代表取締役等が自らケアプラン作成業務を行う居宅介護支援事業所のように、代表者以外に配分する相手がいない場合を想定したものと解されます。
6. 加算額の計算方法
1か月の加算額は、次のように計算します。
加算額(1か月)= 1か月の総単位数 × 加算率 × 1単位の単価
「1か月の総単位数」は、基本サービス費に各種の加算・減算(処遇改善加算を除く)を加えたものです。1単位の単価は、事業所の所在地(地域区分)とサービスの種類によって異なります。
計算例(訪問介護、加算Ⅰイ)
- 1か月の総単位数:200,000単位
- 加算率:27.0%(加算Ⅰイ)
- 1単位の単価:10円
200,000単位 × 27.0% = 54,000単位
54,000単位 × 10円 = 約540,000円
このとき、月額賃金改善要件の基準となる「加算Ⅳ相当額」は、200,000単位 × 17.0% × 10円 = 約340,000円です。その2分の1(約170,000円)以上を、基本給等の改善に充てる必要があります。
※単位数の端数処理などにより、実際の請求額とは異なる場合があります。
7. 手続きの流れとスケジュール
処遇改善加算の運用は、体制届出・計画書の提出から、賃金改善の実施、実績報告書の提出までの一連の流れで行います。
【表7】主な手続きと期限(令和8年度)
| 手続き | 原則の期限 | 令和8年度の取扱い |
|---|---|---|
| 体制届出(体制等状況一覧表等) | 居宅系サービス:算定開始月の前月15日 施設系サービス:算定開始月の1日 |
4月から新規算定・区分変更する場合は令和8年4月1日(指定権者の判断で4月15日も可) |
| 処遇改善計画書 | 初めて加算を算定する月の前々月の末日 | 令和8年4月15日(4月・5月分と6月以降分をあわせて提出) 新設サービスのみの事業者などは令和8年6月15日 |
| 実績報告書 | 最終の加算の支払があった月の翌々月の末日 | 通常の場合、令和9年7月31日 |
※実際の期限・提出方法は、必ず各指定権者の案内をご確認ください。
計画書と実績報告書は、根拠資料とあわせて2年間保存します。複数の事業所を運営する事業者は、計画書等を事業者(法人)単位で一括して作成できますが、提出は各事業所の指定権者に対してそれぞれ行います。
年度の途中で、加算区分の変更や一括申請する事業所の増減があった場合は変更届出書を、事業の継続のために職員の賃金水準を引き下げる場合は特別事情届出書を提出します。
なお、令和8年7月8日には、実績報告書の様式(計算式の誤り等)の差替えが行われています。実績報告書は、厚生労働省のホームページに掲載されている差替後の様式を使用してください。
8. 返還・取消となるケース
指定権者は、次の場合、支給された加算の一部または全部を不正受給として返還させ、または加算を取り消すことができるとされています。
- 加算の算定額に相当する賃金改善が行われていない、賃金水準を引き下げながら特別事情届出書を届け出ていないなど、算定要件を満たさない場合
- 虚偽または不正の手段により加算を受けた場合
実績報告で賃金改善額が加算額を下回った場合は、算定要件を満たさないものとして返還の対象になります。ただし、不足分を賞与等の一時金として追加配分することで、返還を求めない取扱いとしても差し支えないとされています(Q&A問1-9)。
また、令和8年度特例要件を前提にキャリアパス要件等の整備を誓約した場合は、令和9年3月末までに整備し、実績報告書で報告する必要があります。誓約した内容を実施できなかった場合の取扱いにも注意が必要です。
9. よくある質問
Q. 処遇改善加算はいくらもらえますか?
1か月の加算額は「1か月の総単位数 × 加算率 × 1単位の単価」で計算します。たとえば訪問介護で、1か月の総単位数200,000単位、加算Ⅰイ(27.0%)、1単位10円の場合、約540,000円です。加算率はサービスと加算区分によって異なります(本記事の表2・表3)。
Q. 時給制の職員の時給を上げることは、基本給の引上げに当たりますか?
当たります。基本給が時給制の職員の時給や、日給制の職員の日給を引き上げることは、基本給の引上げとして取り扱って差し支えないとされています(Q&A問1-4)。
Q. 派遣職員も対象にできますか?
対象にできます。賃金改善の方法等を派遣元と相談したうえで、対象とする派遣労働者を含めて計画書や実績報告書を作成します。加算を原資とする派遣料の上乗せが、派遣職員の給与に上乗せされるよう派遣元と協議する必要があります(Q&A問2-4)。
Q. 処遇改善手当を支給すると、社会保険料や残業代に影響しますか?
毎月定額の処遇改善手当の新設・増額は、原則として固定的賃金の変動に当たり、社会保険の随時改定(月額変更届)を判断するきっかけになります。また、割増賃金の計算基礎にも含めます。これらは労働・社会保険の法令上の取扱いで、介護・障害福祉のいずれでも考え方は共通です。詳しくは「処遇改善手当と社会保険」「処遇改善手当と残業代」で解説しています(いずれも障害福祉の事業所を例に解説しています)。
10. 障害福祉の処遇改善加算との違い
介護と障害福祉の処遇改善加算は、令和8年6月以降の区分の枠組み(Ⅰイ〜Ⅳ)は共通ですが、根拠となる法律・通知が異なり、要件の細部も異なります。主な違いは次のとおりです。
【表8】介護と障害福祉の主な違い(令和8年6月以降)
| 項目 | 介護(介護職員等処遇改善加算) | 障害福祉(福祉・介護職員等処遇改善加算) |
|---|---|---|
| 根拠法 | 介護保険法 | 障害者総合支援法・児童福祉法 |
| 令和8年度特例要件 | ケアプランデータ連携システムの利用、生産性向上推進体制加算の算定、社会福祉連携推進法人への所属のいずれか(サービス類型による) | 生産性向上の取組5以上(⑱・㉑必須)又は社会福祉連携推進法人への所属、かつ加算Ⅱロ相当額の2分の1以上を基本給等に充てること |
| キャリアパス要件Ⅳ | 年額440万円以上が1人以上 | 年額460万円以上が1人以上、又は職場環境等の取組を全体で14以上 |
| キャリアパス要件Ⅴ | サービス提供体制強化加算・特定事業所加算等の所定の区分 | 福祉専門職員配置等加算(居宅介護等は特定事業所加算) |
訪問介護と居宅介護を両方運営する事業所など、介護と障害福祉の両方で加算を算定する場合は、それぞれの通知に沿って要件を満たす必要があります。障害福祉の処遇改善加算の詳細は「障害福祉の処遇改善加算とは」をご覧ください。
11. まとめ
介護職員等処遇改善加算は、計画書を作成して提出すれば終わる加算ではありません。賃金規程・キャリアパスの整備、計画書の作成、賃金改善の実施、職場環境改善の取組、実績報告という一連のサイクルを、年度を通じて運用する制度です。
特に令和8年度は、4月・5月と6月以降で区分・加算率が異なり、特例要件や誓約の取扱いも加わったため、計画段階から実績報告までを一貫して設計することが重要です。
詳しくは「介護・障害福祉事業所の社労士顧問」「処遇改善加算サポート」をご覧ください。初回のご相談は無料です。
