相談室

相談支援事業には、一般相談支援事業、特定相談支援事業、障がい児相談支援事業の3つの種類があります。

当記事では、これから特定相談支援事業を開設する方に向けて、特定相談支援事業のサービス内容や指定の要件など、指定申請を行う前に知っておきたい情報をまとめています。

ぜひ参考にしてください。

特定相談支援とは

障がい者が障がい福祉サービスを利用するには、区市町村の窓口に申請しますが、サービスを利用する前にこれから受けるサービスについての「サービス等利用計画」を作成する必要があります。

特定相談支援では、このサービス等利用計画を作成し、サービス利用開始後にも一定期間ごとにモニタリングを行う等の支援を行い、サービス利用者にとってどのような障がい福祉サービスが最適かを総括的かつ継続的に支援します。

特定相談支援のサービス内容

特定相談支援では、障がい者・障がい児からの相談に対応する「基本相談支援」、サービス等利用計画を作成する等の「計画相談支援」サービスを行います。

基本相談支援

障がい者・障がい児からの相談に応じ、必要な情報の提供・助言を行い、市町村及び障がい福祉サービス事業者等との連絡調整を行う。

計画相談支援

(1)サービス利用支援

①障がい福祉サービスの支給決定前に、サービス等利用計画案を作成する。
②障がい福祉サービスの支給決定後に、サービス提供事業者等と連絡調整を行いサービス等利用計画を作成する。

(2)継続サービス利用支援

①定められた期間ごとにモニタリングを実施する。
②サービス等利用計画の変更や障がい福祉サービスの変更・更新に係る申請の勧奨を行う。

特定相談支援の対象者

・障がい福祉サービスを利用申請した方や障がい児で、区市町村からサービス等利用計画の提出を求められた方
・地域相談支援を申請した障がい者で区市町村がサービス等利用計画の提出を求められた方

特定相談支援を行うための基準

特定相談支援事業をはじめるためには、特定相談支援事業を行うための人員や設備、運営などに関する基準を満たして都道府県(地域によっては市)に申請を行い、事業者としての指定を受けて「指定事業者」となる必要があります。

指定基準は大きくわけて4つあり、そのすべてを満たす必要があります。

また、この基準は申請時だけでなく、指定を受けた後も満たし続ける必要があります。指定後に万一基準を満たすことができなかった場合は、指定が取り消されることもありますので、注意してください。

指定基準は、指定を受ける都道府県等によって独自の基準を設けていますので、事前に開業予定地の都道府県等に確認しておきましょう。

(1)法人格を有すること

特定相談支援事業を行う申請者は、株式会社、合同会社、一般社団法人、NPO法人などの「法人」であることが必要です。

個人(個人事業)では申請できませんので、指定申請を行う前に法人を立ち上げる必要があります。

また、法人の定款の目的の中に「一般相談支援」を行うための適切な文言が記載されている必要があります。

目的の表記については、申請先の都道府県等により具体的に「このように記載してください」と指定されていることがありますので、事前に開業予定地の申請窓口へ確認しておきましょう。

障がい福祉サービス事業を行う法人の定款事業目的について

(2) 人員基準を満たすこと

特定相談支援事業を行うには、①管理者、②相談支援専門員を置かなければなりません。

申請時点で必要な人員が確保できている必要があり、指定後においても実際にサービス利用者がいるかどうかに関わらず、必要な人員を確保するなど、基準を遵守し続ける必要があります。

①管理者

管理者には資格要件はありませんが、適切なサービスを提供するために必要な知識及び経験を有する者でなければなりません。

管理者としてふさわしい人物を配置する必要があります。

■配置基準:1人。専従であり、管理業務に従事する者。

「専従」とは、原則としてサービス提供時間を通じて、そのサービス以外の職務に従事しないことをいいます。ただし、管理業務に支障がないと判断できる場合は、例外的に兼務が認められています。

■資格要件:なし

②相談支援専門員

相談支援専門員は、障がい者の方が適切なサービスを受けることができるように、利用計画を作成し、地域生活への移行・定着に向けた支援を行うなど、全般的な相談支援を行います。

地域定着支援・地域移行支援を担当する従業者の中から1人以上の相談支援専門員を置かなければなりません。

■配置基準:1人以上。専従であり、その職務に従事する者。

■資格要件:相談支援従事者研修の受講+一定の実務経験を有すること。

特定相談支援事業・障がい児相談支援事業に必要な人員は?

(3) 設備基準を満たすこと

事業の運営を行うために必要な設備(事業所)を設ける必要があります。

①事務室

具体的な広さの規定は設けられていませんが、管理者や従業者の人数に相当する事務机や椅子、書類や備品などを収納するための書庫が収容できる程度の広さが必要です。

原則は専用の事務室が必要になりますが、他の事業と共用する場合は、事務机を完全に分けるなど明確に区分されていれば、同一の事務室であっても差し支えありません。

②相談室

具体的な広さの規定は設けられていませんが、利用申し込みの受付や相談に対応するために適切な広さが必要です。

サービス利用者などが相談に訪れた際に、プライバシー保護の観点から個室が望ましいとされていますが、パーテーションを利用して仕切ることもできます。

③設備・備品

事務室や相談室で利用する事務机や椅子、電話、FAX、パソコン、プリンター、鍵付の書庫などが必要です。

また、感染症予防のため洗面所には、ハンドソープやペーパータオル、アルコール消毒液を設置します。

相談支援事業所の広さと設備について行政書士がわかりやすく解説

(4) 運営基準を満たすこと

運営基準とは、適切なサービスを提供するにあたって特定相談支援事業者が行わなければならない事項や留意すべき事項など、事業を実施する上で求められる運営上の基準です。

特定相談支援事業の運営基準は多数ありますが、その多くは指定申請後に満たすべき基準になっています。また、運営基準プラス独自の基準を設けている都道府県等もあります。

<特定相談支援の運営に関する基準>

1 内容及び手続きの説明及び同意
2 契約内容の報告等
3 提供拒否の禁止
4 サービス提供困難時の対応
5 受給資格の確認
6 支給決定の申請に係る援助
7 身分を証する書類の携行
8 指定計画相談支援給付費の額等の受領
9 利用者負担額の管理
10 計画相談支援給付費の額に係る通知等
11 指定計画相談支援の具体的取扱方針
12 利用者等に対するサービス等利用計画等の書類の交付
13 計画相談支援対象障がい者等に関する区への通知
14 管理者の責務
15 運営規程
16 勤務体制の確保等
17 設備及び備品等
18 衛生管理等
19 掲示等
20 秘密保持等
21 広告
22 障がい福祉サービス事業者等からの利益収受等の禁止
23 苦情解決
24 事故発生時の対応
25 会計の区分
26 記録の整備