介護事業に適した法人形態として、株式会社・合同会社・NPO法人・一般社団法人を比較し、合同会社をおすすめしているイラスト
介護事業の指定を受けるには、「法人」であることが必須です。
これから介護事業所を開設し、介護報酬を受け取っていくためには、まず法人を設立した上で、さらに細かな要件をクリアして、役所から介護事業所としての指定を受けなければなりません。

一口に法人と言っても、株式会社、合同会社、一般社団法人、一般財団法人、NPO法人など、様々な法人形態があります。どの法人を選択しても事業自体は可能ですが、ご自身の今後の事業展開や予算に合った法人を選ぶことが大事です。

介護事業を始めるにあたって、「どの法人が適しているのか?」「自分にあった法人を選びたいが、違いが良く分からない・・・」と悩んでいる方は非常に多いのが現状です。

介護事業所の開設をお考えの方で、法人の選択で悩んでいる方のために、それぞれの法人形態を比較してみました。

介護事業に最適な法人形態

介護事業を始める場合に考えられる法人形態としては、大まかに4種類あります。

  • 株式会社
  • 合同会社
  • NPO法人
  • 一般社団法人

株式会社・NPO法人については、知っている方も多いと思いますが、合同会社・一般社団法人に関しては、よくわからないといった方が多いかもしれません。

それぞれの法人形態について、介護事業を開業する視点から比較してみましょう。

株式会社

法人の特徴

株式を発行して出資者から資金を集め、その資金をもとに事業を行う会社形態です。

会社に対して出資をする出資者を「株主」と言い、実際に会社の業務を行う経営者を「取締役・代表取締役」と言います。出資者と経営者は基本的に別人格ですが、介護事業を中小規模でスタートする会社では、1人または2人で設立して出資者=経営者となることが多いです。

メリット
一人から設立可能で、認知度が一番であることが特徴です。株式会社というだけで信用度が高い傾向があるため、ケアマネジャー等との企業取引や、介護スタッフの人材採用に有利になることがあります。また、株式を発行することで、個人投資家などの第三者から資金調達を行うことができます。
デメリット
合同会社・NPO法人・一般社団法人と比べて、設立費用が高いこと。また、役員の任期ごとの更新費用や毎年の決算公告義務があるため、設立後も一定のランニングコストがかかります。
設立費用の目安 205,000円~240,000円
設立に要する期間 2~3週間
専門家に依頼した場合の平均報酬 60,000円~150,000円
人的要件 1人でも設立可能

合同会社

法人の特徴

合同会社は、出資者が経営に直接関与する会社形態です。出資者と経営者が原則同一であるため、意思決定が早いこと、経営の自由度が高いことなどが特徴です。出資者=経営者ですので、合同会社の役員になるには一定の資金を出資しなければなりません。

メリット
株式会社・一般社団法人と比べて、設立費用が安いこと。公証役場で定款認証手続きも不要であることから、設立に要する時間も短期間で済みます。株式会社のように役員任期がないため、法務局への役員変更登記手続きが不要であること、また、毎年の決算公告義務がないため、株式会社設立よりもその後のランニングコストを抑えることができます。
デメリット
株式会社と比べて認知度・信用面ともに若干劣る傾向があるため、人材採用に不利になることがあります。また、株式会社のように第三者から資金調達ができないため、資金は主に自己資金や金融機関からの融資に頼ることになります。
設立費用の目安 60,000円~100,000円
専門家に依頼した場合の平均報酬 30,000円~80,000円
設立に要する期間 1~2週間
人的要件 1人でも設立可能

NPO法人

法人の特徴

特定非営利活動促進法(NPO法)に基づいて、都道府県知事等(所轄庁)から認証された法人形態です。営利を目的とせず、NPO法に基づく社会課題の解決や社会貢献活動を行うことを目的としているため、福祉や介護事業とは親和性が高いです。一方で、活動の透明性を保つため、所轄庁に対して毎年事業報告書を提出するなど、情報公開が義務づけられています。

メリット
NPO法人を設立する際にかかる定款認証手数料や登録免許税が不要であり、また、設立後の登記変更手続きに発生する「登録免許税」も不要。資本金や基本財産なども必要ないため、設立費用やランニングコストを抑えることができます。原則として収益事業以外には法人税が課税されないなど、税制優遇や助成金を受けやすいことが挙げられます。
デメリット
所轄庁の認証が必要であるため、設立に要する期間が非常に長く、数ヶ月かかります。すぐに介護事業の指定を取りたい場合には不向きです。設立の難易度も高く、専門家に依頼する費用の相場は比較的高くなります。また、所轄庁の監督を受けるため、毎年の税務申告とは別に事業報告等を所轄庁に提出しなければなりません。
設立費用の目安 0円
専門家に依頼した場合の平均報酬 150,000円~250,000円
設立に要する期間 約4~6ヶ月
人的要件 社員10名以上、理事3名以上、監事1名以上

一般社団法人

法人の特徴

人の集まりに対して法人格が与えられる非営利法人です。設立時に2人以上の社員(構成員)と1人以上の理事がいれば法務局へ登記申請することで設立できます。また、適法な事業であれば事業目的に制約はなく、介護事業のような収益事業を行うことも認められています。

メリット
非営利法人でありながら、NPO法人のように所轄庁の認証は不要であるため、比較的短期間で設立することができます。「非営利」という看板が福祉事業とのイメージに合いやすく、非営利型(税法上の区分)として設立すれば、収益事業以外で得た所得が原則非課税になるなどの税制上の優遇措置を受けることができます。
デメリット
株式会社のように利益を「配当」として分配できません。役員報酬や従業員給料は支給可能です。資本金がなく、非営利法人であるため、開業当初は銀行からの融資が受けにくいのが現状です。また、株式を発行できないため、第三者から出資を募ることができません。
設立費用の目安 110,000円
専門家に依頼した場合の平均報酬 80,000円~150,000円
設立に要する期間 3~4週間
人的要件 社員2名以上、理事1名以上(非営利型の場合3名以上)

介護事業所に合同会社をお勧めする4つの理由

これから介護事業を開業される方に、特にお勧めしたいのが「合同会社」です。
  • 設立期間が短い!
  • 費用が安い!
  • 1人でも設立できる!
  • 機動的な経営が可能で法的な縛りも少ない!

理由1.設立期間が短い!

他の法人形態に比べて早く設立することができます。

介護事業の指定申請には会社の登記簿謄本の添付が必須ですが、法務局での審査期間が1週間程度になりますので、登記簿謄本の取得も比較的早く取得することができます。

指定をスムーズに受けるためにも設立期間はなるべく早いほうがよいでしょう。

理由2.費用が安い!

設立に必要となる費用に関して、NPO法人を除くと一番安くなります。電子定款を利用することで更に費用を安く抑えることができます。初期投資がかさみがちな介護事業において、浮いた設立費用を設備資金や採用費用に回せるのは大きな強みです。

理由3.1人でも設立できる!

NPO法人や一般社団法人の設立メンバーは、2人~10人が必要です。

介護事業を行っていく中で、共同経営という形はあまり好ましいものではありません。介護事業と言えども事業経営ですから、素早い決断が必要ですし、組織が軌道に乗るまでの時期はトップダウン式の指揮命令系統も必要です。

合同会社は1人での設立が可能なため、人間関係のトラブルリスクを減らし、ご自身のペースで経営判断を下すことができます。

理由4.機動的な経営が可能で法的な縛りも少ない

出資者=経営者ですので、機動的な経営が可能です。また、NPO法人のように所轄庁に監督されることもありません。

株式会社や一般社団法人のように役員の任期満了による重任登記(更新の手続きと費用)を行う必要がありません。また、決算公告の義務もないため、毎年の事務的な負担や維持コストが抑えられます。法的な縛りが少ない分、本来の業務である「介護サービスの提供」や「事業所運営」に集中した機動的な経営が可能です。

まとめ
法人形態を選択するにあたって、株式会社・NPO法人・一般社団法人でなければいけない特別な理由が無い場合は、最小人数で設立ができ、設立費用も安く、設立期間も短い合同会社がお勧めです。